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医療も「ハイブリッド」の時代

ハイブリッド手術室

内科と外科 同時に治療

「垣根」のない理想の医療へ

血管造影装置を手術室に設置したことで、
内科医と外科医が同時に治療できるようになりました。
内科と外科の垣根を取り払った画期的な設備です。

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ハイブリッド手術室でのCT画像
ハイブリッド手術室で治療を受けた方の治療前のCT画像。左足(向かって右)の血管はほとんど見えない。右足の血管にも狭窄がある。

2011年1月、私たちは札幌で初めて、ハイブリッド手術室を利用した治療を行いました。

患者さんは人工透析を受けている方で、強い動脈硬化があり、足の指が壊死してしまう危険がありました。血行再建としては内科医が行う「カテーテルによる血管内治療」と外科医の「人工血管や自分の血管を移植するバイパス手術」の2通りあります。
この方は同じ日に、同じ室内で、同時に両方の治療を受けたのです。

ステップ1 内科医からスタート カテーテルで

今村 英一郎

副院長(循環器内科)/今村 英一郎

この患者さんに対しハイブリッド手術室での治療を選択したのは今村です。
「1回で済む」「患者さんの負担が少ない」というメリットが最大限活かせると考えたからです。

ハイブリッド手術室での今村 英一郎

まずは今村が右足の血管にカテーテル手術を行いました。
血管造影装置の画像を見ながら、手元でカテーテルを操作します。

ハイブリッド手術室での今村 英一郎の手元

次のステップへ向け打ち合わせ
打ち合わせ中の今村と川崎
放射線技師や臨床工学技士が準備をする間、今村(左)が心臓血管外科医の川崎浩一と打ち合わせをしています。

ステップ2 バトンタッチ 外科医がバイパス手術

続いて3名の心臓血管外科医がバイパス手術にとりかかりました。
右足と左足のそれぞれの血管を人工血管でつなぎます。

小笠原クリニック 院長 川崎浩一

3人の心臓血管外科医【院長/川崎 浩一】【循環器外科医長/松井 欣哉】【北大病院循環器外科講師/久保田 卓 先生】

真剣な表情で手術にのぞむ

見守る外科医の今村
黄色のX線防護衣を着用しているのは今村です。外科医の手術を見守ります。

計3時間半の手術でした。
このハイブリッド手術室は、今回のような血管病だけではなく、消化器分野でも活用できます。

ハイブリッド手術室での手術

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血管センターはいま「シャント」と「フットケア」に/院長 川崎 浩一

血管センターは2008年に、人工透析のシャントトラブルを専門に治療する部門としてスタートしました。

自院の透析患者さんを救う目的で開設しましたが、患者さんは全道から訪れるようになりました。

「シャントで困っている患者さんがこんなにいるのか」と驚いたほどです。

そして病院の新築移転とほぼ同時に、心臓血管外科医の松井欣哉先生を迎えることができ、治療領域は末梢血管全般にまで拡大しました。

このハイブリッド手術室は、そうした「血管の病気」に苦しむ患者さんを救おうとする私たちにとって大きな力となります。

「1回で済む」「負担軽減」が最大のメリット/循環器科部長 今村 英一郎

循環器科部長 今村 英一郎

今回はなぜハイブリッド手術適用と判断したのでしょうか。

この患者さんは当院で人工透析を受けている方で、強い動脈硬化がありました。 特に左足の血流が悪く、このままでは足の指が壊死してしまう危険がありました。

血行再建の方法としては「カテーテルを使った血管内治療」と「人工血管を使うバイパス手術」の2通りあります。

左足の病変は総大腿動脈まで閉塞していたので、外科的に血管形成と右足血管からの「バイパス手術」が適当と考えました。

しかし右足の血管の上流にも別の狭窄病変があり、こちらは「血管内治療」が適当と考えました。

そこで内科で血管内治療、外科でバイパス手術と、2つを組み合わせて同時に行うことにしたのです。

今村先生が行った血管内治療の流れを教えてください。

血管造影装置でX線画像を見ながらカテーテルを患部まで到達させます。

そこで「風船カテーテル」を膨らませ、血管を拡張させます。

さらにステントという金属製の筒を留置しました。

ここまでを私が担当し、川崎院長をはじめとする3人の心臓血管外科医にバトンタッチしました。

「手術室に血管造影装置が入っただけ」で、そんなに大きな効果があるのですか。

ハイブリッド手術室のメリットは、なんといっても「1回で済む」「患者さんの負担軽減」の2点です。
治療の上でとても重要です。

血管造影室と手術室が別ですと、今回のような場合、血管内治療とバイパス手術は別の日に行うことになります。
全身麻酔と局部麻酔を計2回行うことになります。
「特別な治療室」に入るという緊張感を患者さんに2度も味わわせることにもなります。
入院期間も長くなります。

患者さんの負担は、身体的にも経済的にも減らすことができるのです。

この病気はどうやって見つかったのでしょうか。

最初に足の異変を見つけたのは透析担当の医師でした。

2010年12月上旬、左足の指がチアノーゼで紫色に変色していることから、その先生から私のところに検査依頼がありました。

約2週間後に私が血管造影検査を行い、今回の手術が必要と判断しました。

透析の医師から循環器内科医へ、その循環器内科医と心臓血管外科医が一緒に手術をする――血管の病気の治療には、複数の診療科の連携が欠かせません。

ハイブリッド手術室は血管病の治療における内科と外科の協力関係を向上させました。

大動脈瘤のステントグラフト治療にも/循環器外科医長 松井 欣哉

循環器外科医長 松井 欣哉

きょう行った外科手術について教えてください。

今村先生が血流を良くした右足の血管と、カテーテル治療ができない左足の血管を人工血管でつなぎ、右足に流れる血液を左足に送るようにしたのです。

右足の血管もそれほどいい状態ではないので、左手の血管と左足の血管を人工血管でつなぐことも検討しました。
しかし、この患者さんは透析を受けていて左手にシャントがあります。
シャントに近い場所をいじりたくなかったので、この方法は見送りました。

今回の症例以外に「ハイブリッド手術室でできること」を教えてください。

大動脈瘤の治療で威力を発揮します。

血管造影装置で血管を見ながら、カテーテルを使って大動脈用の太い金属の筒「ステントグラフト」を患部に置く治療法は、お腹を大きく切って人工血管を移植する外科手術と比べ、傷が小さく入院期間が短くなります。

ですが大動脈は最も太い血管ですから、万が一のことがあれば外科手術が必要になります。
ステントグラフトの治療からすぐに外科手術に切り替えられるメリットは計り知れません。

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